高校のHPに進路実績が掲載されているが、国公立大学の合格数を重要に考えていることがわかる。もちろん、国公立大学に合格することは生徒の努力の賜物かもしれないが、その中身をしっかり把握していない気がします。
国公立大学進学で問題となるのは、都市圏の出身者で地方国公立大学へ進学する場合である。そこに学びたい学問があるなら問題はないのですが、東京や大阪近辺で学べる同じ学問があるにも関わらずに地方国公立大学に進学していることが気になります。それなら、難関私立大学でも良いのではないかと感じますが、ここに国公立大学信仰があった場合に良くない進路指導になるかもしれません。まず、高校側にあるのは、国公立大学の合格数を増やしたいために国公立至上主義に陥っている点、そして保護者・生徒側は「国公立大学=素晴らしい」と決めつけている点です。
まず、国公立大学の最大メリットである学費の安さであっても、地方国公立大学に進学すると家賃や生活費でむしろ負担が大きくなる点があります。たとえ、理系の大学であっても医学部や薬学部、芸術学部などの私立大学では高額な学部以外はそれほど差はありません。もちろん、一人暮らしを楽しみたいなら別ですが、費用面で考えた場合に地方国公立大学(下宿)と難関私大(自宅)を比較した際にそれほどメリットはありません。
一方で、「教員一人当たりの学生数」に関しては国公立大学が有利です。国立大学では私立大学の半分ぐらいの割合で教員がいます。ただ、この辺りも難しい所であり、どこまで学生の面倒を教員が見る必要があるかの問題です。ゼミなどが大人数になるなら少人数のゼミが良い様に感じるかもしれませんが、難関私大でも数人だけのゼミはあります。そして、このメリットは学生に響くのでしょうか?
また、国公立大学の生徒は比較的真面目な生徒が多い点も言われています。国公立大学へ進学する場合は、どの大学でもある程度はしっかりと勉強しなくてはいけないため高校時代に真面目な生徒が多かった傾向があるのでしょう。ただ、国公立大学でも推薦入試の増加もあるので不安要素があります。
地方国公立大学でも理系なら設備面で私立大学よりも良い場合がある。ただ、この点も怪しい所なのですが、東大が授業料を上げるか検討しているように、地方国公立大学では予算規模が非常に苦しいのは確かです。また、私立大学全体では予算が厳しい大学も多いのでしょうが、難関私大に関しては潤沢な資金がある場合もあります。そして、文型であればそれほどメリットがあるのでしょうか?
そのため、国公立大学であれば素晴らしと考えるのではなく、何が良いか不明な点も多くあります。実際に、進路指導しているので聞いたのは「地方でも国公立大学だから」「生徒が真面目だから」「面倒見が良いから」と曖昧なポイントで説明している場合が多く、「〇〇という研究が~」とはあまり聞きません。
高校生のためのZ会地方国公立大学であっても国公立大学だから難関私立大学より難しいと考えている生徒や保護者も多いですが必ずしもそうは言い切れません。関西圏で言えば、感覚的ですが下の図のようなイメージになります。
大阪公立大学に合格するレベルの受験生であっても同志社大学に確実に合格できるわけではありません。このことを考えれば、兵庫県立大学に合格している受験生の中には滑り止めで関西大学にも合格していない場合があります。そのため、近畿圏内でも国公立大学の下位層の場合は滑り止めが産近甲龍程度の場合があります。そう考えると、地方国公立大学も同様に厳しい現状であることがわかります。確かに、地方の国立大学に進学した生徒の滑り止めは近大や龍大が多かった気がします。
結果として、「難関国立大学 > 難関私大(関関同立以上)VS 都市圏の中堅国公立大学 > 産近甲龍 VS 地方国公立大学」の構図になっているのでしょう。そのため、関西大学(自宅通学)ではなく地方国公立(下宿)でどちらが良いか聞かれると関西大学と答えますが、近畿大学(自宅通学)と地方国公立(下宿)でどちらが良いか聞かれると理系なら地方国公立かな…と答えます。
問題となるのは、難関私立大学に合格する力をつけずに国公立大学の合格を優先したかどうかです。もちろん、本人の希望がしっかりとある場合は問題はありません。ただ、これだけの多くの生徒を地方に進学させている理由は何?と感じることは多いのも事実です。都市部にない学部で地方にある学部はそれほど多くはないと思うのですが…。
高校生のためのZ会国公立大学は受験科目がどうしても多くなります。もちろん、3科目だけで国公立大学に合格できる場合もありますが、基本的に科目数の多さがネックになります。一方で、私立大学は難関私大であっても基本的に3科目で合格できます。
問題となるのは、難関国公立大学へ進学する高校生は二次試験があることから3科目はかなり学力は仕上がっている点です。3科目が仕上がっていれば私大は合格できるでしょう(*そもそも、共通テスト利用でいけますが)。一方で、大阪公立大学で2次試験が2科目になりように、それ以下の国公立大学は2次試験なし~2科目程度になります。そのため、共通テスト程度の難易度は解けても難関私大レベルの問題が解けない受験生がいます。
このことを考えると次の図のことが考えられます。
国公立大学を最低限は狙える生徒に対してですが、学力上位層は国公立大学を目指して頑張ってもらいます。ただ、中位層と下位層は状況が変わってきます。つまり、国公立大学の合格数を増やすために私大対策を遅らせる・しないケースがあります。今回のパターンで言えば上のパターンになります。
極論から言えば、100人が中堅私大であっても1人が東大や京大に合格する方が良いか、難関国公立が0名であっても20人が関関同立に合格する方が良いかの選択がとられます。そして、高校側でインパクトが残るのが前者になります。
もちろん、生徒自身がしっかりと勉強すれば良いのですが、高校側が国公立大学の合格数ばかり考えると誤った進路指導になります。例えば、「センター試験(共通テスト)が終わった後の面談で、バンザイシステムなどで進学予定のない地方国公立大学をどこを受けるかばかり話され、本命の私大の話はされなかった場合や国公立大学がほぼ難しい状態にもかかわらず私大対策は全然されずに共通テストで絶望的になってから慌てて取り組んだ」など良くない進路指導をしている場合があります。
そのため、都市部の高校でありながら地方国公立大学への合格者数・進学数が多い場合には、その理由をしっかり聞いておくべきでしょう。そして、生徒も保護者も国公立大学の数が多い=指導力がある高校ではなく、その中身をしっかりと吟味する必要があります。
今回は、通学圏内の国公立大学が多くある中で、敢えて地方国公立大学に進学することは意味があるのかを考えてみました。医学部などの学費面や学びたい学問があるなら問題ありませんが、共通テスト明けに志望校が変わる場合が多いのも事実です。そのため、しっかりと何をしたいかを考えて進路選択をしょう。