公 開 | 2013年 |
監 督 | 宮崎駿 |
時 間 | 126分 |
出 演 | 庵野秀明 瀧本美織 西島秀俊 西村雅彦 |
主題歌 | 荒井由実「ひこうき雲」 |
配 給 | 東宝 |
興行収入 | 120.2億円 |
堀越二郎は飛行機の設計家になることを目指して東京帝国大学で飛行機の設計額を学んだ。そして、関東大震災が発生した際に汽車の中で偶然出会った里見菜穂子と彼女の女中である絹を助ける。その後、三菱に入社した堀越二郎だが周囲の期待とは裏腹に飛行機開発で悩んでいた。
史実に基づいている点も多く、大正期から昭和(戦前)を描いた作品であるが、関東大震災のシーンは独特でありジブリ作品だから何か化け物でも出てくるんではないかと思えるシーンである。ただ、時代背景に関しては説明が少ないこともあり、今がどのような時代なのか子どもは把握が難しいと思える。また、序盤では夢と現実、そして急な時代が飛ぶこともあり慌ただしい展開になる。そのため、大人向けの作品と思えるほどである。ただ、最大の難点は何故、声優に庵野秀明を採用したかという点である。演出なのかどうかもわからないレベルで棒読みでないかと思えるシーンも多かった。ジブリ作品は作画の美しさに対して声優はズレがある時があるので気になる。
物語を面白くしたのが主人公の堀越二郎の上司にあたる黒川である。背が低く、面白い動きをする黒川であるが、最初は嫌な存在かなと思ったのだが、堀越二郎を支えた人物である。特別高等警察に堀越二郎が狙われた際も自宅の離れに住まわせるなど情に厚い人物である。そのため、黒川の存在が物語を面白くするのだが、堀越二郎との距離をつめるのが早すぎないかな。もう少し、何かあってから認めても良かったのかもしれない。
大きな勘違いをしていた点に堀辰雄の『風立ちぬ』をベースに物語を描いていると思ったのですが、堀越二郎(実在の人物)をベースにヒロインである里見菜穂子(架空の人物)を描いていたのである。ただ、それならばこそ映画は飛行機制作の場面を中心に描いた方が面白くなったかもしれない。里見菜穂子は結核を患っておりサナトリウムで病気療養をしている。堀越二郎と里見菜穂子の関係が堀辰夫の『風立ちぬ』のシーンが多い。
子どもにとってサナトリウムなど解るわけもないので、本作が大人向けの要素が強いとも感じた点である。結核を患っている菜穂子の横で本人が良いと言っても煙草を吸う堀越二郎はどうかな?と思う点もあるが、当時の煙草に関する知識はその程度であったのだろう。
ただ、菜穂子の病気が重たいこともあり、飛行機がメインなのか恋愛要素がメインなのかわかりにくい点もある。当時の、時代背景を入れたのかな?
九六式艦上戦闘機の制作課程まで描かれているが、零式艦上戦闘機(零戦)などは描かれていない。最後のシーンも戦争の悲劇を抽象的に表しているだけであり、どこか消化不良な点もある。純粋に、飛行機好きの青年が時代に先駆けた飛行機を製造する過程だけを描いても良かったのかもしれない。
全般として、ある程度時代背景がわかっていないと難しく感じる人も多いかもしれない。『紅の豚』ぐらい軽く描いても良かったかもしれない。ただ、映画を観てから堀辰雄の『風立ちぬ』を読んでみたいと思ったことを考えれば、良い作品といえるのかな。
コメントを投稿するにはログインが必要です。