受験生を見ていると過剰に授業を受けている生徒が一定数はいます。明らかに復習が追い付いていないので学力が伸びていない。そのため、さらに授業を受ける負の連鎖があります。では、なぜ学校や塾は授業数を増やしていくのか考えてみましょう。
学習塾では授業数に応じて授業料が支払われます。言い換えれば、授業数を増やした方が売上に直結します。そのため、季節講習などは休み中に勉強しないとついていけない、弱点を克服するために講習を受けましょうと言ってきます。もちろん、学力上位の学校への進学を考えているなら講習は必要かもしれませんが、平均点レベルではテスト前に勉強すれば十分到達できます。そのため、生徒や保護者は授業数が多い方が勉強したつもりになり満足してしまう点も問題があります。実際に学力を伸ばすのであれば復習や覚えこみが必要なので授業より自学自習時間を増やす必要がありますが、それでは塾の儲けが減ってしまいます。
一方で、高校では通常授業外で補習をしてもメリットがないように感じるかもしれません(*講習費を徴収している高校もあります)。進学に対応した補習があることは進路に対して真剣に考えている印象を受けます。そのため、生徒募集でアピールするために実施しています。しかし、場合によっては単なるアピールの手段として補習を実施している可能性があります。例えば、夏休みに数回だけの受験対策の補習に何か価値を感じるでしょうか?夏休み中は必死に指導しているなら問題ありませんが、教員が暇な時だけ補習を入れているだけの場合があります。ただ、回数の問題ではなく授業をしたことで年度末の書類に書くことができます。言い換えるなら「やった感」を持たせるためだけの可能性もあります。
嫌な話になりますが、講師の先生の中には「授業数=収入」になります。そのため、受験に必要だと長期休暇中に補習をどんどん入れて儲ける人もいます。つまり、全体の教科間のバランスを無視して自己利益を優先する場合があります。そもそも、優秀な先生であれば通常授業内で仕上げることを考えれば、補習しないと学力を伸ばせないなら教員に問題があるかもしれません(もちろん、生徒もですが)。
日本一の難関大現役合格実績の予備校【東進ハイスクール・東進衛星予備校】
生徒に自由な時間を与えた場合に自ら勉強をするでしょうか?確かに、学力を伸ばすためには自学自習は不可欠になりますが、生徒1人では勉強をしません。そのため、保護者が特に強く望むのが強制的にでも勉強する環境をつくって欲しいと考える点です。つまり、生徒が勉強しないから授業により強制的にでも勉強時間を増やす必要があると考えられます。夏季講習でなどで保護者が講習をどんどん入れたくなるのは、家にいても勉強しないとわかっているからです。そのため、講習を入れれば少なくとも塾で勉強するだろうと考えます。
また、高校などでは自称進学校や受験関連のコースで授業漬けにすることがありますが、生徒が授業以外では勉強しないことがわかっているからです。そのため、授業を増やすことで強制的に勉強をさせることが狙いです。なぜなら、進路実績を上げるためには強引にでも勉強する環境に身を置く必要があるからです。
結果として、子どもが自主的に学習しないために強制的に勉強する時間を増やすために授業時間が増えている点があります。だからこそ、先程の利益を追求して授業数を増やすことは勉強時間が確保できるなら保護者も喜んで受け入れると言えるでしょう。
日本一の難関大現役合格実績の予備校【東進ハイスクール・東進衛星予備校】
授業数を増加して塾や学校と保護者も子どもが勉強するなら納得できるならWin-Winの関係に思えるかもしれません。しかし、問題があるとすれば授業すればするほど学力が伸びるという誤解を定着させてしまう点です。
そもそも、授業数が増加して負担が増えるのは学習意欲が高い生徒になります。なぜなら、授業は個別の学習速度、理解度に応じて受けることが不可能です。当然ですが、通常授業は多くの生徒を対象とするので生徒によっては授業速度が速すぎたり、遅すぎる問題は発生します。そのため、学力の高い生徒や学習意欲の高い生徒の方が授業時間より自学自習時間を確保する方が大事になります。しかし、残念ながら画一的に授業時間を増やしているケースが増えます。ある生徒が志望校の過去問対策をお願いに来たのですが、いつの時間なら空いているか確認したところ「平日・土曜日は全て19時頃まで補習がある。それ以降ならできます」と言われたが流石に断りました。後に担任から文句を言われたのですが、生徒から言われたことを言ったところ、そこまで放課後補習が入っているとは知らずに補習を整理するからお願いしますと言われたことがあります。ここまで補習を入れられていますが実際に入試で使用した科目は英語と古文ぐらいです(*古文に関しては必要とは一切感じませんでしたが)。今考えれば、補習していた先生方は講師のため、授業すればするほど賃金が増えることになります。そう考えると、本当に必要だったかは疑問です…。
つまり、授業数を単純に増加することは学力の高い生徒(意欲の高い)の学力を落とし代わりに、学力の低い生徒(意欲の低い)の学力を底上げすることになる可能性があります。結果として、難関大学は難しいと言えば、何だか成功したような状態に持っていきます。
どのタイミングで、どれだけ授業を受けるかをしっまりと取り組めば学力は伸ばせます。単に、授業料を増やしただけでは効果はありません。