私大希望者であっても積極的に模試の受験を薦められるケースが多くあります。高校3年生の受験生から学校から熱心に模試を受けるように言われているらしいのですが、本当に受験する必要はあるのでしょうか?
まず、全統模試や進研模試など基本的な模試は共通テスト形式の模試であり、記述模試は国公立大学の受験を想定した模試といえます。そのため、国公立大学を希望している受験生は共通テスト形式の模試は必須といます。しかし、問題となってくるのは私立大学希望者は模試を受ける意味は本当にあるのでしょうか?そもそも、私大志望者が模試を受験するメリットは外部試験慣れが目的になります。また、本番まで学習意欲が続かない受験生に焦らせる目的には使用できるでしょう。ただ、志望校選びの目安としては最近の模試は当てはまりません。
センター試験の時代であれば、私大入試と出題形式が異なると言っても目安にはなっていました。そのため、11月頃の模試までは受験することが多かったのですが、共通テストに代わってから私大入試との出題形式や内容の乖離は大きくなっています。もちろん、共通テスト利用で出願を考えているなら別ですが。基本的には学力の目安にはならないでしょう。また、1学期に実施される模試では各模試の平均点が50点を下回っている状況で、あまり目安としての信憑性がありません。
そのため、私大入試との出題形式が大きく異なる模試を受験させたがる進路指導の意図はなんでしょうか?
日本一の難関大現役合格実績の予備校【東進ハイスクール・東進衛星予備校】よく、高校の進路指導から模試を受けるように強く薦められたから悩んでいるという受験生がいます。その際に考えなくてはいけないのは、①模試の受験と勉強時間の確保のどちらが重要か、②模試を受けることに意味がある学力か、この2点になります。
模試は3科目でも時間がかかります。特に2学期以降は追い込みをかけていく中で勉強時間を削ってまで模試を受験する必要があるかどうかになります。たかだか、1日だけ模試に時間を割いてもよいのでは?と考えるかもしれませんが、追い込みが必要な受験生は覚えこまなくてはいけないものが多くあります。それを犠牲にしてまで効果が低い模試を受ける意味がないでしょう。
また、学力がない状態で模試を受験することに意味はありません。得点率で6割程度は採れる状態でないと効果は低いでしょう。そのため、得点率6割以下の受験生の場合は模試の見直しなど時間の無駄なので、まずは基本的な内容を学習する時間に割いた方が良いでしょう。模試の見直しを推奨されているケースがありますが、それは一定の学力があってこそです。
その中でも進路指導が模試の受験を推奨する利用は、①生徒のモチベーション維持、②学力の目安を測る、③従来通りの指導方法、この3点が大きいかもしれません。
まず、模試など区切りがないと学習のモチベーションが維持できない受験生が多くいます。そのため、定期的に模試を受験することで学習意欲を高めることが大事なのはわかります。実際に、受験生は一喜一憂しながら勉強する姿は何度も見ています。それは1つの方法と言えるでしょう。
2つ目に、志望校を決めていくデーターを欲しがるパターンがあります。これまでの生徒と比較して、この偏差値なら〇〇へ挑戦できるのでは…などデーターを集めたい場合があります。もちろん、これまでのデーターは役立つかもしれませんが、データーだけを頼りに進路指導をしているケースがあります。模試の判定はE判定だけど過去問演習では合格点を超えているケースなどあっても、模試の判定が最優先されます。実際に、模試の判定だけを頼りに進路指導をする先生が多くいますが、私大入試の場合は模試の判定があてにならないケースが多いので注意が必要です。
3つ目に、模試を受験させる割には何に使用したかわからないケースが多いのではないでしょうか。それは従来からしている、一般的なものだからといって取り組ませているだけのケースがあります。これまで、1年生でも2年生でもスタサポなど模試を受けてきたでしょうが、それが何に還元されたか感じたことがある生徒の方が少ないかもしれません。
結果、模試を何のために受験するのか、志望校判定で一喜一憂するためだけの材料になっている場合があります。
私大受験生であれば模試は外部試験慣れとモチベーション維持を考えて受験が必要であれば受けても良いでしょう。ただ、ある程度の学力がある前提になります。
では、私大受験生の合格までの目安は何かと言えば、過去問での得点率を目安にすれば良いでしょう。有名大学であれば過去問が豊富にあります。一方で、中堅私大であれば過去問数は少ないかもしれませんが同レベル・出題内容が似ている過去問を解きながら実力を測れば良いでしょう。少なくとも、全統模試などでは偏差値50以上(進研模試なら60)の大学を目指していない限りは模試で実力は測れません。そのため、進路指導部に「〇〇大学を受験したいのですが、志望校の過去問は直前までとっておきたいので同じような問題の大学を教えてください」と聞いてみましょう。そちらの方は有効ではないでしょうか?