大阪府の公立高校の志願者数で約半分近くが定員割れをしている状況になっている。そのため、公立高校では志願者数を増やすために入試を1ヵ月前倒しして私立高校入試の直ぐ後に実施する案が検討されている。では、この改革は意味があるのかを考えてみる。
所得制限を失くして私立高校も実質無償化を推進したのであれば、私立高校への志願者数が増加するのは誰の目にも明らかである。そのため、公立高校の統廃合を加速させる一環であれば納得できる。確かに、教職員の人件費だけでなく不要となった土地を売却すれば資産を増やせる。そのため、公立高校を減らす目的だと感じていた。しかし、公立高校の定員割れが増えたから入試日程の前倒しを決めた所を見ると、いかに教育改革の行動が遅いかわかる。なぜなら、私立高校の授業料無償化と同時に検討しておくべき内容に感じる。そのため、教育政策の方向性がしっかりできていない点に不満が残る。
また、入試時期を前倒しにすれば志願者数が増加すると考えているなら甘い判断といえる。それは教員募集を前倒しすれば志願者が増えると考えている教育委員会が多いことからもわかる。大事なのは公立高校と私立高校でどちらが魅力的な学校であるかを考えるべきである。
公立高校の志願者数が減少してから高校の魅力をアピールしても遅いと言えるでしょう。たとえ、地区上位の高校であっても従来とは違う学力層が入学する可能性があるため、大きく質が変わる可能性がある。では、そもそも公立高校のアドバンテージは何だったのか考えてみよう。
まず、私立高校は男子校や女子校が多かったが共学が進む中で公立高校のアドバンテージはとっくにありません。また、学費の安さに関しては大きな差がありましたが、今回の所得制限なしによる授業料の実質負担がなくなることで公立高校のアドバンテージはなくなりました。もちろん、それ以外の費用は私立高校の方が依然として高いままですが、公立高校自体もタブレットの購入や修学旅行費の上昇など決して費用が安いわけではありません。結果、一部の私立高校を除けば学費面のアドバンテージはなくなりました。また、何となく公立志望の中学生が多かったのですが、今回の私立高校の人気高の影響で何となく私立高校を選ぶ生徒が増えるかもしれません。
では、公立高校のアドバンテージがなくなったと言えば、そうではありません。まず、通学距離を考えれば近い学校を選択する生徒はいます。また、私立より公立を志望する中学生の中には公立の方が校則が緩いという印象があります。他には、過剰に教員が余っているのか、選択授業の選べる数が多い点は魅力的です。ただ、教育困難校で履修可能な数学Ⅲは必要かどうかは別問題でしょうが…。
結果として、公立高校のメリットはほとんどないかもしれません。各校の魅力づくりができなければ明らかに私立高校に負ける可能性があります。
公立高校のデメリットはもちろん存在します。代表的なことが下記になります。
まず、公立高校の多くで設備が老朽化している場合があります。もちろん、建て替えっが行われている一部の学校は綺麗ですが、この辺りは私立高校に比べれば見た目の綺麗さは大きく差があります。単純に言えば、公立であればトイレ掃除は生徒のみの場合が多いですが、私立であれば生徒+業者が入る場合があるので見栄えが良いです。
また、公立高校は生徒から徴収する金額が少ないというメリットはありますが、部活動の活動費や文化祭費、体育祭に使用できるお金などが制限されている場合があります。安いのは良いのですが、安かろう悪かろうにならないかは不安です。
私立高校と比べれば進路指導を積極的にしてもらえない印象があります。もちろん、担任次第や進路実績重視の高校もあるので私立だから良いわけではありません。ただ、公立高校の方が総じて担任に頼らずに自分自身で頑張ることが多いのではないでしょうか?それこそ、担任ガチャになるかもしれませんが大学受験は生徒自身がしっかりしないといけない印象を受けます。
この様に考えれば公立高校は凋落の一途を辿るように感じますが、そもそも、それを意図した政策の様に感じたので仕方ないかもしれません。
オホーツクの海の幸を全国の食卓へ大阪に限った話ではないですが、教員不足を導いたのは間違いなく地方公共団体の責任になります。なぜなら、教員採用自体を制限・募集なしにしていた時期が長くあったことが問題である。例えば、私自身は保有免許の採用試験は大学在学中に0人でした。そして、4年生の時には近畿圏内では和歌山県しか募集がなく、他地域の採用試験を受けに行った経験があります。このことから分るように、ある世代の教員が極端に少なくなっていることがわかります。結果として、その世代が中堅教員や分掌長になる時期でも人がいない状況をつくってしまた。結果、世代間のバランスを崩してしまったことになります。
また、大阪府の場合は橋下徹知事の際に非常勤講師の賃金の大幅な値下げがありました。非常勤講師は教員予備軍(採用試験の受験者)であったり、隙間の授業を埋めて貰える存在でありました。大幅な賃下げは公立で働くメリットをなくしてしまいました。そもそも、月の給料はアルバイトした方が高い(空き時間は給料が支払われないので)だけでなく、私立高校はまだ従来の賃金体系であるため、敢えて公立で働くメリットをなくしてしまった。その上、他業種の賃上げが行われた以上は働く魅力はなくなったと言えるでしょう。
そのため、教員間の年齢層を歪めた点と講師であれば私立の方が給与面で良い点をを考えれば、どの様な道を辿るかは想像できます。ここまで統廃合を進めながら教員不足になっている点は非常に問題かもしれません。
オリジナルコンテンツ数No1!【ABEMAプレミアム】公立高校の志願者数減は私立高校にとって追い風であるのは間違いありません。ただ、私立高校も万全な状態ではない可能性があります。それは、志願者増加に対して教員の確保が上手くいっていない可能性がある点です。私立高校には定員がありますが、公立と違い定員はあってないような感じになります。そのため、基準を満たしていれば志願者が増加すれば増加しただけ入学させたいでしょう。しかし、問題となってくるのは教室のキャパと教員の確保になります。
教員不足は公立高校だけでなく、私立高校にも影を落としてます。特に、理数系や国語教員の不足は顕著になっています。そのため、以前では考えられなかったケースとしては、入試対策の勉強をしてこなかったにも関わらず進学校で採用されるケースや不適格(指導力がない)とされても別の高校で採用されるなど教員の質が低下している懸念があります。つまり、志願者数が増加すれば喜ばしいことですが、教員の確保が困難になっている点です。もちろん、十分に教員間で指導する時間や余力があれば良いのですが、ほとんどが疲弊しています。そのため、以前より仕事ができない(教師に適していない)人材が増えたことも否めません。ただ、これは私立高校だけの問題ではありませんが、志願者数が増加すればするほど対応しなくてはいけなくなります。
また、学力上位層の高校では従来は入学してこなかった生徒層も入学する可能性があります。つまり、受験勉強をしたいから授業料はかかるが選んだコースにも関わらず、無償化により受験の意識が低い生徒も入学する可能性があります。ただ、これは実際に蓋を開けないとわかりませんが生徒層は十分に変わる可能性があります。
また、私立高校にとって追い風の状態にも関わらずに生徒数を増やせない場合は「なぜ」がついてくるリスクはあります。
公立も私学も関係なく、お互いが競争して切磋琢磨することを求める気持ちはわかりますが理想論でしかありません。現状は、大阪は公立高校の統廃合を加速させる一方で、私立高校間の競争が高まるでしょう。また、公立高校は上位校は残れるでしょうが、中堅校がどんどん下がる可能性があります。少なくとも、子ども達には母校がなくなるような事態は避けて欲しいものです。