はじめに
福岡県の私立中学校で公立高校へ進学を希望していた3人の生徒の願書を学校側が県立高校の締め切りと勘違いをして受理されなかった問題がある。今回複雑なのは、県立高校と学校組合立高校で願書受付の期限が違っていた点である。この問題で1番の被害者か生徒自身であるが、一体責任は誰にあるのか?。
被害にあった生徒や保護者などが中学校を糾弾するのは十分に納得できる。もちろん、願書受付の期間を間違えていた中学校の責任は重たい。ただ、それ以上に問題が発覚してから直ぐに慰謝料を提案した中学校の初動ミスがある。最終的には慰謝料の話になるかもしれないが、まずは謝罪、そして今後のことを話し合うことが優先すべきではないだろうか。そのため、今後のことを話し合う(生徒や保護者が落ち着くまで)、普通は慰謝料の話はでないと思うのだが…。この行為が保護者や生徒の怒りに火に油を注いだ形になるだろう。ただ、テレビのコメンテーターが安易に学校を責めていたり、願書を受け付けないなんて融通の利かない教育的配慮がないと責めているが、そもそも問題は起こるべきして起きたのではないでしょうか。
まず、今回の問題となった学校は私立中学であり、付属高校以外に進学する生徒は全体として決して多くはありません。そのため、高校への願書の取り扱いに慣れていない可能性があります(もちろん、それを言い訳にはできませんが)。また、引っ越しなどで県外からの受験生もいるでしょうから、外部からすれば県立高校と学校組合立高校の違いと言われてもピンときません。そのため、ミスが起こることを前提に、出来る限りミスを防ぐ方法に変更していなかった点が気になります。
皆さんが意見を言っている様に、学校が一括で出願するのではなく生徒・保護者が責任をもって出願すれば良かったのではないでしょうか。もちろん、内申書などの問題があるかもしれませんが、大学受験では「ネットで出願」→「調査書の郵送」がメインなことを考えれば、この様にすれば今回のミスは十分防げたはずです。
余談ですが、そもそもネット出願に切り替えることができないにも関わらずに、パソコン配布やタブレットで学習と言っても本当に効果的な学習をしていると言えるのでしょうか?
担当の先生だけが責任があるのか?
この様な生徒の人生に関わるミスをした時に担当の責任者の先生は生きた心地がしないでしょう。もちろん、仕事として責任を持つことは必要です。ただ、何事もヒューマンエラーが生じるのは当たり前のことです。実際に、正月の飛行機事故にしても誰も手を抜いていたわけではありません。それにも関わらずに、とんでもない事故が発生したようにヒューマンエラーは避けられない点があります。だからこそ、そもそも学校から一括の出願はリスクしかないのかもしれません。
実際に、大学受験でも指定校推薦入試の中には学校一括で送付する必要がある場合があり、全員の願書が揃うまで待つ必要がるのですが、その間は願書は保管しておかなくてはいけない上に、締め切りを間違えたら怖いので大丈夫と思いながら何度もチェックしていた記憶があります。それほど慎重になりますが、負担も大きいものです。
そして、よく言われる意見では、「生徒の人生がかかっているから責任をもって取り組むべき」「ミスが内容に複数でチェックすべき」などの意見がありますが、これは難しい点です。感情論では十分に理解できますが、現実問題としては教員不足も要因の一つにあります。つまり、既に教員自体がオーバーワーク気味に働いていることもあり、気づかないうちに集中力が欠けていることがあります。また、複数のチェックや会議で日程の確認などは既に取り組んでいると思います。そのうえで、ミスは起こります。例えば、責任者はミスがあれば責任を負うことになるので真剣かもしれません。しかし、責任を負わない教員がチェックすればダブルチェックの意味は何もありません。実際に、調査書の記載ミス確認など学年団でダブルチェック、トリプルチェックしてもらっても最終確認で何箇所も間違いが発覚します。そのため、一般的に言われるチェックをしっかりとすれば間違いがなくなるとは決して思いません。
以上のことを考えれば、学校一括での出願方法ではミスが起きることは予想できたかもしれません。
感情論では学校のミスであるため願書の受け入れを特例で実施すべきと感じます。そして、今後、同じ事案が発生しない様に出願方法を変更すべきでしょう。一方で、融通が利かないと言いながらも願書を受け付けないことを部外者が安易に批判すべきではないかもしれません。確かに、文部科学省や県の教育委員会がトップダウンで受け入れを許可すれば全てが解決するかもしれません。ただ、今回は非常に話題になっただけで多かれ少なかれ類似の案件は発生しています。
例えば、定期的に報道される学校一括での申し込みによる資格試験の受験が出来なかった等は私自身も何度か報道を目にしたことがあります。あるいは、表面では出ていないかもしれないが、大学入試での指定校推薦入試などのミスも全国では何件か起きているのではないでしょうか…。そのため、感情論を抜けば「学校の責任だから願書を受け取って欲しい」も「時間厳守のため願書を受け取れない」も両方とも正論になってしまいます。この場合に簡単に大岡裁きはできないのでしょうが、それでも公平性を理由に拒否しても他の受験生は今回の件では誰も文句を言わない気もしますが…。
結果、トップが自己の責任でしっかりと判断すれば良いとは思うのですが。
受験は生徒自身のためのものであり、何から何まで学校任せにする必要はありません。今回の、出願に関する件も学校一括で出願であり、一部の都道府県ではネット出願なのにと言っているケースもあります。しかし、共通テストの出願も学校一括です。そのため、「なぜ出願を生徒自身にさせるのではなく、学校一括にするのか?」という疑問点がでます。
恐らく、一つの答えに生徒任せでは不安な点があるのではないでしょうか。例えば、出願書類の不備は教員でチェックすることがあります。恐らく、皆さんが考えているよりも記入ミスは多くあります(自分の住所さえ間違えたケースもあります)。そのため、出願書類に不備がないかを学校側にさせる方が確認の手間が省けるといえます。また、自分自身のことであっても書類の提出期限を簡単に破る生徒は一定数います。例えば、指定校推薦入試で合格したにも関わらずに締め切りまでに入学手続きをしていない生徒がいました。先方から連絡が入り謝罪後に急いで手続きをして進学できましたが、その際の第一声は「そんな書類は届いていない」です。そのため、ある程度は学校が管理したいのかもしれませんが、もう自分の進路は生徒自身に責任を持たせて良いとは感じます。ただ、今回みたいに生徒に任せられないようなシステムであるなら学校側はしっかりとしておくべきだったでしょう。
今回の件で被害者は出願できなかった生徒と保護者になります。そして、今回の処理を間違えたことで学校が大きく批判されていますが、何も関係ない在校生もある意味で被害者になります。そのため、学校だけでは処理ができない問題である以上は、教育長など教育委員会が問題を整理しても良いのではないでしょうか。どちらにせよ、ミスがでるようなシステムは直ぐに改善した方が良いのではないでしょうか。