中高生に対してキャリア教育が実施されているが、将来の仕事(やりたい仕事・自分に合った仕事)を考えさせる講義が増えている。しかし、これには問題点があるのではないだろうか?
中高生にやりたい仕事を探しなさいと言っていること自体が間違いに感じます。なぜなら、美容師などは明らかにその道に進みたい人が働きます。でも、美容師の入社3年以内の離職率は50%以上、10年以内の離職率は約90%と言われるようにやりたい仕事でも離職率が高いことがわかります。この様な話になると専門学校の関係者は、業界として職場を移ることが多いからと説明されますが「やりたい仕事」=「離職率が低い」は大きな間違いではないでしょうか。また、キャリア教育を実施する教員自体も新卒3年以内に約46%が離職をしています。このことを考えると「やりたい仕事」を探しなさいと勧めてもキャリア教育としては成功していない気がします。
また、「自分に合った仕事を見つけなさい」と指導するキャリア教育にも違和感を覚えます。ある程度の方向性はあっても良いのですが、そもそも中高生が仕事のすべてを知っているのでしょうか。これは大人でも自分が経験した仕事しかわからない所があります。だからこそ、ドラマや漫画などで経験のない職種の働き方を見ると新鮮な感覚になります。でも、中高生が知ることができる職種など身近な職種だけしかありません。その中で、自分に合った仕事を見つけるのは不可能ではないでしょうか。また、「自分に合わない仕事」はしなくても良いと考えることにもなります。仕事では、「やりたい仕事」と「やりたい仕事」ではなく、「やるべき仕事」と「やる必要がない仕事」の2つで考えるべきでしょう。たとえ、自分に合った仕事を見つけることができても、その業務の中には「自分とは合わない、やりたくない仕事」があるでしょう。その存在を無視してはいけません。例えば、人とのコミュニケーションが苦手だから研究職についたは正解でしょうか?たとえ、研究職でも同僚や上司など多くの人と関わります。単に、接客業やサービス業、営業より人と接する機会が少ないだけで苦手でもコミュニケーションは必要になります。
このことから、理想的な「やりたい仕事」を中高生、大学生でさえ見つけることは困難です。もし、見つけたらワークホリックの完成ではないでしょか?仕事が楽しくて仕方がない人は働き続けても苦ではないでしょうから。
【ヒューマンアカデミー通信講座】よく、「大企業で働くよりも中小企業で働いた方が自分の力が伸ばせるだけでなく、実際に待遇も良い会社がある。そこに就職する方が良い。」と綺麗ごとを言う場合があります。
もちろん、中小企業の方が財務状況も待遇も、仕事の中身も良い場合もあり、大企業であっても面白くない仕事はあります。ただ、その中小企業を大学生はどの様に見つけることができるでしょうか?どれだけの企業数が日本に存在しているか知っているのでしょうか?そして、それを大学生がチェックすることは可能でしょうか?この場合に言われる、良い中小企業は有力な地場産業かプライム市場に上場しているが知名度が低い会社の場合が多く、本当の意味の中小企業を意味している場合は少ないのではないでしょうか。そのため、職種で絞って結果的に良い中小企業に巡り合える場合はあるでしょうが、最初から幅広く企業研究できる大学生は少数派ではないでしょうか?
そのため、大学生が収集できる企業の情報は限りがあるため大企業に人が流れるのは仕方がない。ただ、仕事をしていく中で本当に力を持った中小企業に出会えることもあるので転職に関しては綺麗ごとではなくなるでしょう。
ただ、多くの先生や文科省が間違っているのは、仕事で頑張りたいと思っている人ばかりではない点ある。特にキャリアアップを目指していない人達も多いでしょう。そもそも、キャリア教育を教える学校現場でさえ教頭になる試験を受ける人が少ないのに…。むしろ、給与もそこそこで残業がなく、プライベートに時間を使える方が喜ぶ人が増えているのではないでしょうか。
仕事で重要なのは適応力ではないでしょうか。どの様な仕事であっても、「楽しい仕事」と「楽しくない仕事」に分かれます。その時に、「楽しくない仕事」に適応する力が必要ではないでしょうか。たとえ、苦手なことであっても取り組む適応力は必要です。また、やりたい仕事であっても職場の人間関係が悪ければ嫌な仕事になります。
最近は、「自分に合った仕事」「やりたい仕事」を強調するばかりですが、自分自身が適応することも大事ではないでしょうか?例えば、学校の中にも生徒指導部でありながら生徒の指導をしない先生もいます。また、進路指導部であっても入試制度を理解していない場合もあります。どちらの場合も、自分がやるべき仕事に適応していくことが大事でしょう。
そして、「自分に合った仕事を見つけた」と感じている人の多くは、その仕事に適応できているだけかもしれません。もし、人間関係が最悪な職場であったら同じ様に思うでしょうか?担当の顧客がクレーマーばかりで楽しいと感じるでしょうか?
以上のことから、本当にキャリア教育をするなら中高生・大学生に対して適応力を身につけさせる方が良いでしょう。例えば、「誰もしたくない仕事」であっても給与が高いことから仕事とプライベートを割り切る人を否定はできないでしょう。では、その適応力はどの様に身につくかと言えば、普段から身につける機会は多くあります。ただ、学生に迎合しすぎた教育では身につくことはないでしょう。