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観点別評価の導入は生徒の学力を伸ばすのか潰すのか【小中高生】

誰のための教育改革なのか

はじめに

2022年度から高校でも始まった観点別評価。観点別評価は、生徒の学習状況を各教科ごとに設定した観点別に評価して、その実現状況を分析的に捉えることを目指した評価方法であり、ABC評価で成績を出します。では、実際に上手く評価されているのでしょうか?

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観点別評価では「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの分野で成績をつけるため、テストの点数だけが良くても評定5が簡単にとれなくなった。逆に、テストの点数が悪くても評定が4になる場合も増えている。そのため、一概に評定4と言っても学力自体には大きな差があり、学力の把握が難しくなっている気がする。

もちろん、観点別評価の導入により日々の授業を含めてしっかりと生徒個人個人を見て総合的に評価するという考え方は良いかもしれない。しかし、現実的に生徒一人一人を授業ごとに評価することは簡単でしょうか?それを採点していけるほど時間的な余裕が教員にはあるのでしょうか?まして、非常勤講師であれば授業時間外は給与が支払われない中でサービス残業当たり前の事務作業を増やして良いのでしょうか?

結果として、観点別評価をしやすいように「提出課題を増やす」「小テストを増やす」「グループワークなどで考えさせて意見を書かせる」など「考えさせる課題」を増やすことが便利でしょう。明らかに、点数をつけるためだけの課題に思える内容もあり、生徒にとっては内申点のための作業が増えている印象です。もちろん、学力上位の学校であれば生徒自身がある程度は考え行動するため「考えさせる授業」は有効かもしれません。ただ、その様な生徒ばかりでしょうか?中学生に聞いたところ、数学でグループで解題を与えられ考える授業があったが、できる子が解いて他は雑談タイムであったと聞きます。その状態で評価されても適切な評価がされると考えるでしょうか?

もし、社会人であれば人事考課や採用試験などで必ず正確に能力を評価されていると感じたことはありますが?答えは「No」ではないでしょうか?そのため、観点別評価を真剣に取り組めば客観性がなくなる可能性もあり(*教員により差が生まれる)、客観性を重視すれば当たり障りのない形で評価するしかありません。結果、苦労している割にわからなくなります。

でも、そもそも「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」がAABと評価されても、じゃあ改善するために頑張ろうと思うのでしょうか?テストの点数であれば前回より上げようと思うのですが…中学生に聞いても観点別はどの様に評価されているの?と聞いてもテストでの可視化された内容以外は「よくわからない」が多く,何を改善するかわからないのではないでしょうか?

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観点別評価を導入しなくても学力状況や生徒個人の課題は十分に把握できていたと感じます。ただ、観点別評価によってテストなどで何が出来ていないかの統計がとれるようになったかもしれません(*それでも「知識・技能」か「「思考・判断・表現」の分け方や出題方法によって正確かどうかは当てにはならないでしょうが)。ただ、相変わらず教員の仕事量が多いのは変わらないので、生徒との面談がどれほどできるでしょうか?形だけ取り組んでも1人20分だったとしても20×40人なら800分も必要になります。13時間前後も必要ですから1日2時間も面談時間を設定しても2週間以上かかります。たった20分で生徒の行動を変えるきっかけになることの方が稀でしょう。

では、ますます観点別評価の使いどころが難しく感じますが、大学入試などでも推薦入試が増加しているように多様な生徒を評価するための材料づくりにとしか感じません。「eポートフォリオ」が何だったんだろうと感じるように、多角的に評価することで生徒に適した指導をみつけていくと考えているのでしょうか。結果として、内申点を意識した良い子を増やすことが目的で学力重視だった時代に比べて尖った生徒は少なくなる気もします。なぜなら、高校受験であっても内申点が高い方が持ち点で有利になる以上は嫌でも評価は気にするしかありません。そのため、「要領が良い子ども」か「私立一貫校の子ども」が有利になり、「真面目な子ども」が内申点のために苦労が増えるように感じます。

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大前提に、35人~40人程度のクラス編成で子ども達の学習状況をしっかりと把握しなさいと言うこと自体が無茶に感じます。また、人数が多いほど客観的な評価の方法が必要であり、教員により評価に差をつけないようにすることが望ましいでしょう。実際には、学級崩壊している様な環境で勉強を強いられている生徒もいるわけですから、改善すべき点が違う気もします。

また、テスト重視の評価のつけ方が駄目のような風潮も気になります。テストで点数をとるためには「授業をしっかり聞くこと」「復習をする」「応用問題に答えられる力をつける」などで十分に「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」が試されます。また、観点別評価にしても勉強しない子どもは一定数います。結局、評価方法をわざわざ変えたとしても子どもの学力向上は簡単には期待できません。

むしろ、「大学入試を一般選抜中心にする」「高校・大学は優秀な生徒のみ無償化」など勉強するための動機が必要ではないでしょうか?

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