東近江市の市長がフリースクールを巡って発言が問題になっています。確かに、市長の発言自体は問題あるかもしれません。しかし、コメント欄では不登校は仕方ないという意見が圧倒的に驚きます。ここで、問題なのは不登校はセンシティブな問題になってしまい、肯定しないと叩かれる恐れが出てしまっていることです。問題は、子ども達をどの様により良くするかが大事なのですが、それを忘れないようにしなくてはいけません。
まず、子ども達は学校や教室に通えなくても学ぶ場所は提供されるべきだと感じます。それが、小中学校であれば別室登校やフリースクールになるわけです。そのため、フリースクールなどは一定の意義があることは間違いありません。また、高校であれば全日制の学校に通えない子ども達が通信制や単位制の学校に通っています。これらの存在は子ども達に学習の場を提供する意味で必要な存在であることは間違っていません。一方で、これらに在籍する子どもの数が増えていることは果たして良いのでしょうか?
まず、不登校の原因は色々あります。特定疾患などの病気で仕方がない場合もあれば、人間関係、集団生活に馴染めない、規則正しい生活ができない、勉強についていけない、起立性、社会不安、対人恐怖症など個々に抱えている問題は違います。そのため、何が不登校生徒に効果的なのかわかりません。例えば、教師が「今日も授業頑張ろう」と言った際に、「私は頑張っているのに、もっと頑張れなんて無理」と心が折れる生徒もいます。そのため、集団生活の中では対応しきれないケースなどフリースクールなり、単位制や通信制の高校の存在は非常に助かる場合があります。
では、実際に不登校生徒が出た場合に学校ではどの様に対応するでしょうか。例えば、別室登校になれば登校時間や学校に来る日もバラバラになる可能性があります。担任であれば教科から課題を受け取ったり、質問の対応など空き時間が無くなります。もちろん、子どもを1人で放置はできないので学年団を中心に担当者が割り当てられます(*空き時間がなくなります)。結果、数人の不登校気味で別室登校が出れば学校として対応ができなくなります。そのため、余剰な教員がいれば解決なのですが、現場はそれほど人数がいないのが現状です。ただ、教室に戻せるようにするために必死に対応しています。もちろん、そのまま不登校や退学する生徒もいますが、普通の学校生活に戻れる子どももいます。ただ問題に感じるのは、①不登校は仕方がないという傾向が気になる、②専門機関と連携がとれていない、この2点になります。
①に関しては、教員は何とか学校に通えるようにと努力はしています。一方で、物理的に時間がとられるので学校に通っている生徒を後回しにしているケースもあります(*授業準備を手を抜いたり、進路の面談などを放置するなど)。そのため、担任が空回りさせられることが多くあります(*管理職への報告などの書類もつくらないといけない)。家庭でも努力している場合もあれば、放置している場合もあります。ただ、安易に学校に行かなくても良いという風潮ができることは決して良い状況と言えません。また、②のように専門機関と連携をとりながら…と言いたい所ですが非常に難しいケースもあります。これは担任の負担を軽減してくれる場合もありますが、逆に外部機関であれば調整などで負担が増大する場合もあります。結果として教員が疲弊していくだけの場合もあります。
結果、根本にあるのは子どもが良く成長するために何をするべきかを一番に考えて行動すべきことです。生徒それぞれに抱えている問題が違うので適切なタイミングで適切な助言などをしていくべき…。ただ、現実的かどうかはわかりません。しかし、大事になるのは学習する場をしっかりと提供を続けるかどうかです。そのためにはフリースクールや単位制、通信制高校の必要性があると言えます。
イーブックイニシアティブジャパン eBookJapan不登校気味の生徒に一生懸命に話を聞いたり、対応している先生を見ると素晴らしいと感じる点があります。ただ、ここで一歩踏み込んで考えたいのは、同じように欠席もなく学校に通っている子ども達にも同じように時間を割いているかどうかです。この答えは、「割いていない」になるでしょう。なぜなら、時間的に1人1人の生徒に多く時間を割けないからです。
例えば、皆さんも学校などで懇談があった際に感じないでしょうか?1人あたり15分~20分程度で二者懇談か三者懇談は終わります。この短い時間で何を伝えることができるでしょうか?以前、クラスの人数が少ない際に余裕があったので平均して1人当たり1時間30分ぐらい話している場合がありました。これは元から、その時間設定ではなく後ろに空きがある場合は保護者も時間を気にせずによく話されました。でも、これだけ時間が割けるのはクラス人数が少ない場合です。40人学級であれば15分~20分程度で最低限の情報共有だけとなります。
このことからも、不登校生徒だからではなく生徒のことを考えて1人1人にしっかりと時間をかけてあげられることが理想です。ただ、現場は明らかに教員不足になっています。また、不登校を担当する先生がいる場合でも、他の生徒と会いたくないという生徒が2人いれば意味がありません。
以上のことからも、社会の変化だからという理由で不登校の生徒を簡単に容認すること自体が危ないのが現状です。それより、どの様に対応すべきかをわかりやすくしてあげるべきです。全てを担任が抱え込まないことが重要です(*以前なら不登校生徒=担任が悪いと烙印がつけられることもあった)。そのため、「何となく」の不登校生徒も多くいることも知って欲しい。そういう意味では、フリースクールに通うことは大事でしょう。
アンケートモニター不登校だけでなく、遅刻や欠席が多い生徒に対して不安になるのは学校を卒業してから大丈夫かな?という問題です。不登校の要因は色々とありますが、働いた場合にそれを受け入れることができる社会と言えるでしょうか?
そもそも、有給休暇の消化率やサービス残業の多さからも社会では労働基準法が厳格に守られていないケースがあります。もし、同じ職場で突発的な休み、遅刻、早退、仕事をしない同僚がいた場合に、あなたは受け入れることはできますか?これが簡単に認められるほど余剰人材を企業は抱えていないでしょう。もちろん、育児や介護で仕方がない場合は快く認めてもらえる職場もあるでしょう。ただ、よく理由もわからない状態では難しいのではないでしょうか?
そのため、学校では単純に不登校と割り切って仕方がないと考えるのは間違っています。学校生活以上に、人間関係やストレス、規則正しさが要求される社会で、何も対応せずに社会に出させるのでしょうか?学校に在籍している間さえ乗り越えれば良いのでしょうか?
以上のことからも、「何が出来て、何ができない」かをわかっていくべきだと感じます。そして、このまま不登校生徒が増加すれば社会が受け入れきれないことが起きます。それこそ、他国の様に若者の失業率が20%程度もあり得る話です。
以上のことから、単純に不登校生徒を増えること自体を仕方がないと考えるのではなく、それが個人の問題か学校の問題か家庭の問題かはわかりませんが、改善していくという意識は大事です。また、サーフティーネットの存在は重要ですが、数が増加すると対応しきれません(現在でも不足している)。そのため、本当に支援が必要な子どもに支援がいかなくなる可能性があります。誰もが不登校について真剣に考えなくてはならない時がきているかもしれません。